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とんでもhappenな釣り 4

 パチンコを打たれる方なら誰でもそうだと思うが、私はパチンコ屋に行くのに、1000円札一枚だけ持って行く勇気はない。1000円で出るなんてよほど運がよくなければあり得ない。パチンコにたとえると何か不純なように聞こえるが、それとよく似た体験を釣りでしたことがある。それはサーフに入って2年目のこと。

7月のある日、私は京都府の伊根に夜釣りに出かけた。狙いはシロギス、クロダイ、あわよくばマダイ。初めは観光船乗り場でやったが全くアタリがなく、場所を探すうちに、現在では波止ができて立派になっている通称「網干し場」に行き当たった。車は乗り入れられないが、足場がよさそうな良いポイントに見える。それで私は、網干し場の入り口に車を留め、護岸の中央に陣取って再び釣りを開始した。けれどもやはりアタリがない。とうとうあたりが白み始め、夜が明けだした。盛夏のこと、日が昇れば納竿せざるをえない。釣果がない私はハリの号数を落として、キスでも釣れればいいと思い再び釣りだした。すると早速アタリがあり、釣れてきたのは12㎝ほどのピンギス。「なんや、ピンギスか。」そう思ってハリををはずそうとした。ところがこのピンギス、ハリが口にかかっていてすごく生きがいい。それで私は、とりあえずキスを水汲みバケツに生かしておいて、少し大きめのハリで、1本バリ仕掛けを作り、生かしておいたキスの口にハリを引っ掛けて3~40mあたりに投げ込んでおいた。そのときのタックルは確か、サーフリーダーにチタノスエアロ8000。例の左巻きのあれである。あまり期待せずに放っておいたが、しばらくして「ガリガリ」と何かを引きずる音が聞こえてきた。ふと見ると、なんと先ほど投げておいた「ピンギス仕掛け」の竿だ。今から思えば、ドラグのない投げ専用リールなので糸は出ないから引きずられて当然。よく竿を持って行かれなかったことだと思うが、とりあえず私はあわてて合わした。何か重いような軽いような。それでも生体反応を感じながら上げてみると、なんと人生初のマゴチではないか。寸法は40cmを少し超えるものであったが、初めて釣ったマゴチにすっかり舞い上がり、そそくさと竿をたたんで家にすっ飛んで帰った。

さて、キスを餌にマゴチが釣れるとわかった以上、再度挑戦しない手はない。それで、石橋を叩いて渡る性格の私は、伊根のマゴチ狙いをする2日前にわざわざ餌のキスを確保しに泉南まで釣りに行った。ところがそんなときに限って食いが良く、餌にするはずのキスは、ほとんどがハリを飲み込んで上がってくるので、即昇天。ハリを大きくしたりして苦労の末に確保したのは10匹ほどのピンギス。まあ、ないよりまし。足りない分は現地確保で十分まかなえるだろう。そう考えた私は、クーラーボックスにセットしたブクにキスを生かして持って帰った。翌日、キスを見ると・・・おー、無事生きている。そのキスを見ただけでマゴチの姿が目に浮かんでは消えた。

翌朝10時頃、伊根に向けて出発。夕方に追加で餌のキス釣りをする算段だ。ルンルン気分で車を運転していた私は、ふと荷室の異変に気づいた。先ほどまで聞こえていたブクの音がしなくなっているのだ。あれ? 電池は朝取り替えたぞ。そう思った私は確認のために路側帯に車を留め、荷室のピンギスクーラーを確認しに行った。すると、やはりブクが止まっている。故障のようだ。これはえらいことだ。パニクった私はない知恵を絞って、とりあえず近辺の釣具店を探した。ところがこんなときに限ってなかなか見つからない。かくなる上は、伊根までのルート上にある、釣り餌店Mまで走ってしまおうと思い、アクセルを踏み込んだ。ところが残念ながら、釣り餌店Mに着いてブクを買ったときにはすでに遅く、キスは7匹が犠牲となっていて、残りの3匹もすっかり元気がなくなっていた。それでも私は気楽に「まあ現地に着けば確保できるし。」と思い、さほど気にも止めず伊根に向かった。

宮津を過ぎて海が見え始めたとき、私は海を見て愕然とした。泥濁りの高波が押し寄せている。これでは当初考えていたキスポイントは釣りにならない。まあ、伊根の湾内ならなんとかなるだろうと車を進めた。ところが、伊根に着いてさらに驚いたことに、湾内に濁りが入っている。実は私は、数日前に通過した台風の余波が残っていることを計算に入れていなかった。その台風は九州西岸から日本海側を抜けていたのだ。これでは、キス釣りはどこに行っても無理だろう。気持ち的に余裕がなくなっていた私は、どこかの釣具店に別の餌を調達しに行く考えすら思い浮かばなかった。それで、選んだ方法はピンギス釣り用に買った300円のイシゴカイオンリーで夜釣りに突入することだった。竿を出したのは例の網干し場横の道路上。それがまた、こんなときに限ってエサトリが活発。300円のイシゴカイなど、とっぷりと日が暮れた頃にはなくなっていた。結局、何も獲物がないまま、午後9時には車の中でふて寝を決め込んでしまった。

目を覚ましたのが明け方の4時。もう辺りが白み始めている。この時点で半分やる気をなくしていたが、とりあえずピンギスクーラーを覗くと、幸いなことに3匹のピンギスは生きている。私は気持ちを持ち直して、ダメ元で1匹目のピンギスをマゴチ仕掛けにつけ投げ込んだ。つもりだった。おかしい。オモリの着水音がしない。おかしいなと思いながら仕掛けを点検しようと竿を持つと、糸のテンションが真上から来ている。「あ!」気がついたときには遅かった。電線のことを全く頭に入れずに投げてしまったのだ。キスは道路上の電線にぶら下がり、ピクピクと動いている。あおってはずそうとしてもどうしてもはずれない。やけくそで思い切り引っ張ると、オモリまでは回収できたが、切れた仕掛けはピンギスともども電線にぶら下がったまま。万事休す。残りのピンギスは2匹。私は上空のピクピク動くピンギスに後ろ髪を引かれながら、残りの2匹のピンギスを2本の竿に取り付けて投げ込んだ。もちろん、電線に細心の注意を払いながら。このときにマスターしたのが「正座投法」。ご想像のとおりの投げ方だ。飛距離はせいぜい30m。でも、もう投げ返すわけにはいかない。ピンギスにこれ以上の負担をかけるわけにはいかない。私は仕方なく、三脚に2本の竿を立てかけて、その場に座りこんだ。

気がつくと、あたりはすっかり明るくなっていた。通りがかりのおばちゃんが近寄ってきて、「釣れるかえ?」と話しかけてきた。釣れていないことを伝えると「そうかえ。」と言って去っていった。おばちゃんが去るとき、確かにおばちゃんが竿尻を足に引っ掛けたかに見えた。竿尻が動いたのだ。「おば・・・」話しかけようと思ったとき、すでにおばちゃんが竿から離れているのに、また竿尻が動いた。「え?もしかしてアタリ?」ベールをフリーにしてやると、糸がスルスルと出て行くではないか!! 半信半疑で大アワセすると、ズシッとした手応え。首を振るような感触と確かな締め込み。それからはもう必死だった。カケアガリがきついので、それに引っ掛けまいと必死に巻いた。そして・・・ふと我に返ると、足元に大きなマゴチが横たわっていた。水面に上がってきたのも気づかずに巻き込んで、知らないうちに足元の草むらからマゴチを上げてしまったようだ。そのマゴチの寸法は忘れもしない拓寸「55.5㎝」。生涯で2匹目のマゴチは立派なCランクだった。そのときにへなへなとその場に座り込んでつぶやいた独り言を、今でも私は覚えている。

「役満は狙わんと、上がられへんねん。」(役満・・・麻雀用語。最高の手役。)

たった3匹のピンギスで見事に釣ったマゴチのことは、私はきっと一生忘れないと思う。

その後、何度かキスを30匹ほど確保して伊根に釣行したが、キジハタ、アオハタ、エソは釣れたものの、とうとう伊根ではマゴチは釣れずに現在に至っている。今は私にとって、伊根は遠い存在の釣り場になりつつある。今年は久しぶりに行ってみようかな。

1000円だけしか持っていなくても、出ることがあるパチンコの例えを絵に描いたような釣行だった。蛇足ながら、この話はその当時大阪協会の機関紙「あげしお」に投稿し、掲載された。平成2年の夏のことであった。

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